放射線部 検査・部門紹介 放射線治療
放射線治療とは
放射線治療は、外科療法、化学療法、免疫療法と共にがん治療を支える4本柱の一つです。
がんの根治、症状緩和など目的に応じて治療の方法を選択します。放射線治療単独で根治を目指す場合もありますが、その他の手法と併用した治療(集学的治療)が一般的です。
放射線治療の特徴
放射線治療はがんの病変部分に放射線を当てることでがん細胞を死滅させる事ができ、外科療法と同じように病気の部分だけ治療する事ができますが、手術とは違い以下のような特徴があります。
- 身体に負担の少ない治療
- 機能・形態の温存
- 通院で治療ができる
このような特徴から、高齢者や全身状態が悪いなど、外科療法や化学療法が困難な場合でも治療が可能です。 また、放射線治療は一般的に行われているレントゲン検査やCT検査と比べると、とても強い放射線を使って治療を行います。目的の場所へ正確に照射するために、患者さん自身が動かないことや動かないように固定をすること、正確に位置を合わせること、治療に使う機械の精度を保つことがとても重要です。
放射線治療の流れ

① 放射線治療科での診察
主治医から放射線治療が提案され詳しい説明が聞きたい場合や放射線治療を受けたい場合には、主治医から放射線腫瘍医を紹介され、受診することになります。
腫瘍医は患者さんの状態や、病気の広がり、他の治療との組み合わせなどを検討します。そして腫瘍医から患者さんへ放射線治療の詳しい説明、治療の目的や方針、リスク等の説明を受け、提案された治療を受けることに同意した場合に放射線治療の準備が始まります。
② 計画CT
計画CTは通常のCT検査と異なり、放射線治療を行うために必要な検査となります。
実際に治療を受ける時には、計画CTを撮影した時と同じ姿勢になってもらう必要があります。その姿勢を毎回の治療で再現するために、皮膚に直接マーカーを書かせていただき、必要に応じて固定具を作成する場合もあります。
③ 治療計画
撮影した計画CTを使って、放射線腫瘍医が最適な照射方法を検討します。
放射線を当てる範囲やどの方向からどのくらいの量をかけるかなどの治療計画をコンピュータ(治療計画装置)で立てます。
④ 治療
実際の治療では、計画CTの時と同じ姿勢になるように、皮膚に描いたマーカーを参考に体の向きを調整します。照射の方法によって時間は異なりますが、通常寝ている時間は10分程度となります。放射線治療は特に痛みを感じることはありません。寝台の上で寝ているだけで治療ができます。
治療の期間中は専属の看護師が様々なケアをしてくれますので、不安や困ったことなどはスタッフに気軽に相談してください。
⑤ 経過観察
放射線治療は治療中に効果が出てくる場合もありますが、終了してから数ヶ月〜数年立ってから反応が出てくる場合もあります。 そのため予定の回数の治療が完了した後も、放射線腫瘍医による定期的な診察を行います。
放射線治療の種類
放射線治療は大きく分けて二つに分けられます。体の外から放射線を照射する外部照射と、体の中から照射する内部照射です。外部照射と内部照射を組み合わせて行う場合もあります。
外部照射
リニアック(直線加速器)と呼ばれる装置を使って体の外から病変部へ放射線を照射します。放射線治療のほとんどは外部照射によるものです。1回10分ほどの治療を平日5回、合計で15回〜30回程度が一般的ですが、がんの種類や場所、治療の目的などから放射線腫瘍医が適切な回数、方法を提案します。
■強度変調放射線治療(IMRT)
強度変調放射線治療(IMRT)は、複雑な形の病変や、病変と正常臓器が近い時などに有効な治療法で、放射線を様々な方向から、かつ強さの強弱をつけることで、病変に対して集中的に照射をし、正常な臓器に対する影響を減らす事ができます。
■定位放射線治療(SRT/SBRT)
定位放射線治療/体幹部定位放射線治療(SRT/SBRT)は、比較的小さい病変に対しあらゆる方向から放射線を照射することで、より病変に集中して放射線を照射する方法です。そのために一回の放射線の量を増やす事ができます。その代わりに他の照射法に比べて、より精密に位置合わせをする必要があり、体全体が動かないように固定をします。
治療時間は他の治療と比べ長い場合が多く、20分〜30分程度となります。
■呼吸同期照射・息止め照射
呼吸によって病変が大きく動いたり形が変化したりする場合に、息を止めて治療を行う、もしくは呼吸の状態を監視しながら治療を行う方法です。通常の呼吸に比べ、放射線が当たる範囲を狭くさせる事が可能です。実際の計画CTや治療では息を止めて行いますが、息を吸う量も毎回同じになる必要があります。
そこで専用のメガネをつけていただき、患者さん自身で呼吸の様子を確認してもらいながら息止をして治療を行います。
■画像誘導放射線治療(IGRT)
治療を行う際には、体に描いたマーキングを参考に毎日同じ姿勢で寝台に寝ていただき治療を実施します。しかし体の中の臓器、病変は毎日同じ位置にあるとは限りません。そのため治療開始直前に治療の寝台の上でCT撮影を行い、正確に位置の修正を行うことで、より精度の高い治療を実施する事が可能です。
内部照射
内部照射は放射線を出す物質を体の中に入れて照射します。体の中に入れる方法には器具を用いて挿入する方法や、飲み薬や注射で投与する方法があります。
■密封小線源治療
密封小線源治療は、カプセル等に密封された、放射線を放出する小さな線源を体内の病変の近くや病変内に挿入して放射線を照射します。当院ではRALS(Remote After Loading System): 遠隔操作式後充填装置を用いて主に婦人科領域(子宮頸がん、子宮体がん等)で治療を行っています。
■画像誘導小線源治療(IGBT)
外部照射の時と同じく、CT用いて日々の病変の状態に合わせた治療を行う事ができます。
当院ではRALS治療室内に自走式のCT装置が設置されています。通常のCTと違い、治療寝台が動かないことで安全で正確な治療が可能です。
■非密封小線源治療
非密封小線源治療は、溶けやすいカプセル等に封入されているか、または注射薬の形になっており、内服や点滴のように静脈から投与されます。甲状腺がんや多発性骨転移に対して治療を行っています。当院の治療設備
■第一リニアック室
・Synergy(Elekta社)
・Cataryst
■第二リニアック室
・VersaHD(Elekta社)
・Cataryst
・ExacTrac
■RALS室
・Flexitron HDR(Elekta社)
・Aquilion LB(Canonメディカルシステムズ)
■計画CT室
・Aquilion LB(Canonメディカルシステムズ)
・Sentinelシステム(Elekta)
■治療計画装置
・Monaco
・RayStation
・Eclipse
・Elements
・Oncentra
品質管理について
当施設の放射線治療装置は第三者機関による「治療用照射装置(X線)の出力線量の測定」を受け、適正な出力線量である事が証明されています。また、医学物理士、診療放射線技師が中心となりQAプログラムを構築し、機器の精度の維持と安全な業務に努めています。