病院・診療科について高血圧・慢性腎臓病 :夏場の血圧管理法 ~ sick day rule ~
皆さん、シックデイルール(sick day rule)という言葉をご存知でしょうか?
通常は、インスリン治療を受けている糖尿病患者さんが、胃腸炎などによって下痢・嘔吐を生じたり、食事が摂れなくなったときの対処法のことを言います。たとえば、水分を十分補給し、食べやすい糖質を摂取する、インスリンは原則として継続する、などのルールです。
もうひとつ の“シックデイルール”

皆さんのご家族のなかには、高血圧、あるいは慢性腎臓病で降圧薬を服用されている方も少なくないと思います。
その様な方が発汗、下痢などで脱水になったとき、あるいは何らかの理由で十分な塩分・水分が摂れなくなったとき、血圧が下がり過ぎてしまうことがあります。夏場はもともと血管拡張や汗による塩分喪失などのため、血圧が下がり傾向となっています。このような場合、冬場と同じ降圧薬を漫然と続けていると、知らないうちに血圧が予想以上に下がってしまい、立ちくらみやめまいなどの症状があらわれることがあります。
降圧薬のなかでも、とくにレニン・アンジオテンシン系阻害薬というタイプの薬は、塩分摂取量によって降圧効果が大きく左右されます。血圧が下がりすぎて腎臓へ行く血流量が不足し、急に腎機能が低下してしまうこともあります。このような場合は直ちに降圧薬を中止しなければいけません。
血圧管理の方法

夏場、屋外で活動・運動をする予定がある場合、血圧が低めなら、その日だけ降圧薬を休薬する、というのもひとつの方法です。あらかじめ主治医とルールを決めておくといいでしょう。
もちろん血圧のコントロールや減塩は大事ですが、“過ぎたるは及ばざるが如し”です。主治医の先生とよく相談し、上手な血圧管理を心がけて下さい。
2020年10月
杏林大学病院 腎臓内科、リウマチ膠原病内科 診療科長/教授 要 伸也
杏林大学病院 腎臓内科、リウマチ膠原病内科 診療科長/教授 要 伸也