病院・診療科について熱中症が疑われた時の対応
熱中症対策
雨の日が続き、湿度が上がってジメジメしている日を感じる毎日が続いていると思います。梅雨が明けるといよいよ夏本番。最高気温が急上昇し、それに伴い熱中症の発生率も格段に上がってきます。熱中症は、初期対応を間違えると死に至ってしまうものです。きちんと熱中症について知って頂き、熱中症が起こりやすい・起きている状況に気づき、 そして迷わずアクションにつなげていただければ幸いです。
熱中症は7月に注意
職場における熱中症で亡くなる人は、毎年全国10人以上にのぼり、4 日以上仕事を休む人は、400人を超えています。去年は酷暑だったという印象も強いかと思いますが、実際に厚生労働省の発表によると、昨年の熱中症による死傷者数は1,178 人、その内の死亡者数は 28 人と前年度の倍以上の数字であったとされています。

上の図をみていただくと、7 月上旬から下旬にかけて急激に熱中症患者数が増えていることが分かります。 梅雨明けで、暑さに体が慣れきっていない7月が最も熱中症が発生しやすいということに注意が必要です。
熱中症の発生機序
熱中症は「暑熱環境における身体適応の障害により発生する状態の総称」と定義されています。簡単にいえば、「気温・湿度の高い環境によって引き起こされる体調不良」ということです。
私達のカラダは、36~37 度で正常に働くようにできており、異常な高体温は生命維持に関わります。そのため、体温が上昇し始めると、熱を外に逃がすために、皮膚にたくさんの血液を流し空気へ熱を伝えて逃がす効率を上げます。また汗をかくことで、汗が蒸発する際の気化熱を上昇させ、体に熱
が籠もらないようにします。

逆に言えば、この機能がうまく働かなくなってしまうと、熱が籠もって体温が上昇し、熱中症に至ります。例えば下記のような場合です。
これらの条件がそろうと、右上図のように熱中症への負のスパイルが始まります。この条件が揃わないようにすることが熱中症対策となります。
熱中症が疑われた場合の初期対応
STEP1 「意識レベルの確認」
熱中症を疑った場合、放置すれば死に直結する可能性のある事態であることをまず認識する必要があります。
そのため、すぐに救急車を呼んだほうがいいかどうかの判断がまずは大切です。
その基準は「意識がはっきりしているか」です。呼びかけに反応がない、という場合にはすぐに意識障害とわか
るかと思います。難しいケースは、一応受け答えはできているときではないでしょうか?受け答えをさせている時に、「いつもと比べると何となくおかしい」「受け答えが微妙にずれている」、このように何となく違和感を覚える状態であれば、意識障
害であると判断し、救急車を呼んで下さい。
STEP2 「体温を下げる努力」
救急車を呼んだ場合も、呼ばずに様子をみるという判断をした場合も、どちらも現場ですぐに体を冷やし始めることが重要です。重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。
1.涼しい環境への避難
2.脱衣と冷却

3.水分の補給
STEP3 「一人では絶対に休ませない」
熱中症の場合、急激に悪くなる場合や、気持ち悪さから嘔吐して窒息に至るケースがあります。救急車が車での間や、会社内で休憩させて様子をみる場 合にも、必ず誰かが付き添う形にして下さい。
杏林大学医学部付属病院 救急総合診療科 任期助教 須田智也