健康ひとくちメモ辛い料理とおなかの関係

 近年、激辛料理の人気が高まり、コンビニでも手軽に激辛商品が手に入るようになりました。SNSでの「激辛チャレンジ」動画も流行し、若者を中心に、より刺激的な味を求める傾向が強まっています。これには激辛を食べることでストレス解消効果や味覚の刺激による食欲増進効果、さらにはSNSで発信することで、達成感や承認欲求を満たせることなどが関係しているかもしれません。

激辛のメリットとデメリット

 激辛料理の辛み成分であるカプサイシンは、汗をかかせたり、代謝を上げたりする効果があります。一方で、激辛料理は健康への影響も懸念されています。過剰に摂取すると、胃腸の粘膜を刺激し、胃炎や潰瘍を引き起こす可能性があります。カプサイシンは消化を促進する働きがありますが、過剰摂取は逆に消化不良を引き起こすことがあります。また血管を拡張させる作用があり、頭痛や吐き気を誘発することがあります。つまり胃腸が弱っている時や、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの経験がある人は注意が必要です。

炎症性腸疾患と激辛料理

 若い方を中心に炎症性腸疾患(IBD)の患者さんが増えています。IBDには、主に潰瘍性大腸炎とクローン病があり、腸に慢性的な炎症が起こる病気のため、激辛料理には注意が必要です。IBD患者さんであっても、お薬でしっかり炎症をコントロールできていれば楽しむ程度の香辛料を用いた料理は必ずしも避ける必要はありませんが、炎症が続いている状態では腹痛を感じ、下痢を悪化させる可能性もあります。

辛いものとの付き合い方

 胃腸が弱い方や胃腸の病気をした方が辛いものを食べたくなったら、まず少量から始めましょう。そして何か異常を感じたらすぐに食べるのをやめ、医師に相談することが大切です。 辛い料理は食欲を刺激し、食事を楽しくしてくれる食べ物です。しかし、過剰摂取は健康を害する可能性があることを忘れてはいけません。自分の体調と相談しながら、適量を楽しみましょう。



2024年11月
杏林大学医学部消化器内科学教室
教授 大森 鉄平
(付属杉並病院 消化器内科)
(※杏林大学新聞第32号より抜粋)