健康ひとくちメモがんを知る~がんの知識を深め共生を学ぶ~
家族やご自身、そして職場の方々の中にも、「がん」を発病する可能性があります。そのような時に備えて、一人ひとりが「がん」を身近な病気として正しい知識を深めておくことが重要です。理解を深め、支え合うことで、患者さんが安心して治療に専念できる社会を築いていきましょう。
① 「がん」の仕組みと原因
人間の体の細胞は、毎日分裂して新しい細胞が生まれ、その数は“約37兆個”と言われています。しかし、細胞分裂をするときに「変異」が起きることがあります。「変異した細胞」は、修復されたり排除されたりすることによって正常に保たれますが、修復・排除の仕組みが働かず、「異常な細胞」ができてしまうことがあります。その異常な細胞が増えて塊になったもののうち、悪性であるものを「がん」と言います。
また、「がん」は周囲に広がりやすく、血管・リンパなどに入り込み、全身に広がるといった特性をもっています。
がんの原因
男女別の「がん」の原因
男性の場合は一番多いのが喫煙、女性の場合は細菌やウイルスなどの感染によるものです。その他の原因として飲酒、塩分摂取や野菜・果物の摂取不足などの食生活や過体重や運動不足などの生活習慣によるものです。
その他
・原因がわからないがん:白血病や脳腫瘍などの小児がん(細菌・ウイルス、生活習慣とは関係なく発症するものが多い)
・高齢化:年をとって細胞分裂の回数が多くなり、細胞が変異する機会も増えるため。また、細胞を正常に保つ働きが年齢によって低下するため。
日常生活の中での予防
・生活習慣: 喫煙・受動喫煙・飲酒・食事(野菜不足、脂肪のとりすぎなど)・運動不足などは自分で心がけることでリスクを減らすことができます。
・細菌やウイルス: ピロリ菌などの感染対策を行い、感染してしまった場合は早めに治療を受けましょう。
・遺伝的な原因の可能性がある方は、定期的に「がん検診」を受けましょう。
② 「がん」の診断
現在、「がん」になる人は “2人に1人” と言われています。喫煙や飲酒、生活習慣の乱れが蓄積し、50歳前後から発症していく傾向があります。なお、「がん」の発症部位は心臓を除いたほとんどすべての臓器となります。
男女別の「がん罹患数」と「がん死亡数」
③ 進行と治療法
がんの進行
「がん」は細胞が変異してから10~20年で1cm程になると言われています。その後、1~2年で2cm程に成長し、自覚症状が現れてきます。1cm程度になると検診で見つけることができますが、「がん」は大きくなるまで自覚症状がありません。
「がん」は早期であれば、治療により9割の方が治る病気です。(がんの種類によって多少異なりますが)「がん」の進行度と5年生存率は、Ⅰ期(初期)が92.8%、Ⅳ期(末期)は11.5%です。そのため、自覚症状がなくても、検診を受けておくことがとても大切です。
がんの治療法
主な治療法は、手術療法・放射線療法・化学療法(抗がん剤などの薬)で、「がん」の種類や状態などによって選択、複数の治療法を組み合わせて効果的に治療を進めていきます。また、最近は「がんゲノム医療」が保険適用で行われています。がん細胞の遺伝情報(ゲノム)を解析し、遺伝子の変異に基づいた最適な治療を行うことよって治療成績が向上し、副作用も軽くなるのが特長です
治療を受ける際は、自分の病気・検査・治療などについて十分な説明を受け、内容を理解した上で治療法を選択する「インフォームド・コンセント」や、自分の病気や治療について主治医とは別の医師に意見を求める「セカンド・オピニオン」などを利用し、納得のいく治療方法を選択することが大切です。
④ 患者への支援
■「がん」を発症した方がつらいと感じること
・体の痛み・つらさ: 吐き気でつらい、体が痛くて耐えられない
・心のつらさ: 将来のことが不安で眠れない、社会復帰のことが心配、治療費が心配、働けない、収入がないことが心配など
■専門職チームで患者と家族を支援
がんになると本人はもちろん家族にも不安や悩みが生じます。そこで医師をはじめ、看護師、薬剤師、カウンセラー、リハビリ専門職、栄養士、ソーシャルワーカーなどがチームで支えます。がん相談支援センターを併設している医療機関もあります。
■緩和ケア
医師・看護師・薬剤師をはじめ、多職種間で、体と心の痛みやつらさを和らげる支援を行います。がんと診断された時から治療と並行してスタートし、状況に合わせて割合を変えていきます。
⑤ 「がん」との共生
職場の理解
仕事をしながら治療をしている方に対する職場の理解が必要です。患者さんは、検査や入院、放射線療法・化学療法での治療のために仕事をお休みします。復帰した時には体力が戻っていない可能性もあります。そして、その後も定期通院や定期健診などでお休みすることもあります。職場の同僚や上司は病気について正しく理解し、協力することがとても大切です。
アピアランスケア
病気になる前と治療中や治療後では、脱毛など外見に変化が現れることがあります。特に社会復帰したとき、外見の変化を気にする方もいると思いますので「アピアランスケア」をしっかり行うことが大切です。
患者さんが、自分らしく心地よく過ごせるよう、下記のようなケアを行っています。
- 外見への介入:皮膚科や形成外科の治療、よくあるのはウイッグの提案など整容的な方法を用いたケア
- 心理的な介入:社会場面などで、認知の変容を促し心理的な負荷を軽減
- 社会的な介入:外見変化後の対人行動やコミュニケーション方法を助言、場面のシミュレーションを行う。周囲との人間関係を保ち安心して社会の中で生活するための方法の検討
まとめ
「がん」は誰もが直面する可能性がある病気です。そして、早期に発見・治療すれば治る病気です。まずは、定期的な検診を受けましょう。
また、家族や友人など身近な人が「がん」と診断されても、これまで通りに接し、「がん」のことを一緒に考えていくようにしましょう。正しく理解し、寄り添うことで、患者さん本人や周囲の人が共に暮らしやすい社会になることでしょう。