健康ひとくちメモフレイルと食事~高齢期の栄養のポイント

 高齢になると、白髪が増えたり、目がかすんだり、食事の量が減ったりなど、様々な身体的な変化が現れます。なかでも筋力の低下など身体機能の変化や気力の低下など「フレイル」の状態が進むと、要介護状態になるリスクが高まります。しかし、正しく食事をとり適切な栄養を摂取することで、フレイルを予防することが可能です。
 今回は、フレイル予防のための栄養のポイントや、おいしく楽しく食事をとるコツについてご紹介します。

低栄養とフレイルの関係

 私たちは食事をすることで、身体を動かすエネルギーを得ています。しかし食事の量が減ると体を動かすためのエネルギー源や、筋肉や皮膚、髪の毛、内臓などをつくるために必要なタンパク質などの栄養素が不足してしまいます。このような状態を「低栄養」といいます。
 低栄養になると、活動に必要なエネルギーが不足し、疲れやすくなります。そのため、外出が億劫になり、家の中にこもりがちになってしまいます。そうすると、活動量がさらに減少し、食欲も低下してしまいます。このような負の流れを「フレイルサイクル」といい、これを食い止めることが重要です。

フレイル予防に役立つ栄養素

 特に大切なのが、筋肉や皮膚のもとになる「タンパク質」と骨を作る「カルシウム」です。
 身体を動かす時には筋肉が働きますが、その筋肉の両端は骨とつながっています。また、骨は毎日少しずつ壊され、新しい骨がつくられることで強さを保っています。そのため、毎日「タンパク質」と「カルシウム」をしっかり摂取することが、とても大切です。

タンパク質を多く含む食品

 タンパク質には、「動物性タンパク質」と「植物性タンパク質」の2種類があります。これらを偏りなく摂取することが大事です。

 特に肉類は、どの世代にとっても重要なタンパク源です。高齢者の方にも週3回程度は摂っていただきたいと思います。脂が苦手な場合は、鶏肉の皮を剥いだり、豚肉の脂身をカットしたり、蒸したり茹でたりすることで、さっぱりと食べることができます。また、臭みが苦手な方は香味野菜や香辛料を活用すると食べやすくなります。

カルシウムを多く含む食品


 カルシウムの摂取には「乳製品」が非常に有効ですが、苦手な方は「小魚のふりかけ」や「小松菜」などの緑の濃い野菜を活用するとよいでしょう。
 食品は一つの栄養素だけでできているわけではなく、様々な栄養素を含んでいます。そのため、一つの食品に偏ることなく、様々な食品を取り入れることが、バランスの良い栄養摂取につながります。

食事のポイント

 栄養バランスのとれた食事をするためには、毎回の食事で、主食、主菜、副菜の3品をそろえることが大事です。

主食 ご飯、麺、パンなどの中から1つ
主菜 肉類、魚類、大豆製品、卵類、乳製品から1つ
副菜 野菜、海藻、きのこの料理から1つ
       
 例えば、主食の中からご飯、主菜に焼き鮭、そして副菜に野菜たっぷりの味噌汁を組み合わせるとバランスの良い食事になります。たまごサンドウィッチにすると、主食と主菜を一緒に摂ることができますし、豚肉と野菜を電子レンジで加熱してラーメンの上に乗せるのもお手軽な方法です。
 食事は1日3回、365日のことですので、無理し過ぎずに改善することが大事です。疲れているときは、コンビニやスーパーのお惣菜や魚の缶詰、冷凍野菜などを活用し、上手に手抜きをしながら体を休めてください。  
 食事の改善は、長く続けることによって効果が現れますので、「一生懸命に頑張る1ヶ月よりも少しずつ続ける6ヶ月」をめざし、短距離走ではなく長距離走の気持ちで取り組んでいただきたいと思います。無理をせず、楽しみながら食生活を整えていきましょう。



2025年4月
杏林大学保健学部健康福祉学科  
准教授  大久 朋子(管理栄養士)
(※動画で市民講座 学びの杜 2021年度「高齢期の食事と栄養」より)