臨床工学技士は、様々な医療現場で活躍する医療機器のスペシャリスト。
臨床工学科では、ECMO(体外式膜型人工肺)や手術用ロボットなどの最新技術を使いこなし、最先端医療を支える「命のエンジニア」を育成します。
高度な医療機器なくして現代の医療はありません。その機器に医学と工学の両面から専門的にアプローチするのが臨床工学技士。新型コロナウイルス感染症下では、人工呼吸器やECMOを操作し患者の命を救ってきました。このように、集中治療室や手術室などで機器の操作・点検管理を行うことで、人の健康を守り、病気を治す医療現場に不可欠な職業です。
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臨床工学技士とテクノロジー
臨床工学技士の仕事は、テクノロジーの進歩とともに変化しています。今後更に、ロボットやAIが医療現場に浸透し、高度な技術を使いこなす人材が求められます。医療現場における臨床工学技士の存在は、ますます重要になっていくと言われています。臨床工学技士は医療機器を通して、患者のみならず、医師・看護師からも感謝される職種です。
医療機器の進歩とともに知識や技術は年々アップデートが必要です。臨床工学技士は医療機器のスペシャリストとして、いま必要な設備の導入を医師に提案したり、医師と医療機器メーカーに対して的確なアドバイスをする専門家としても活躍しています。また、医療機器の費用対効果を算定するなど、病院経営にも参加しています。
患者さんの生命維持装置を的確かつ安全に操作することができるのは「臨床工学技士」だけ。大学病院や総合病院、透析専門病院・クリニックをはじめ、医療機器メーカー、公的機関(PMDA等)への就職など医療現場の外にも、幅広い道が開けています。
中島 章夫 杏林大学保健学部教授
臨床工学科は2006年4月、東京都で最初の大学養成課程としてスタートして以来、15年間で715名(修士卒:25[7]名、博士卒:3[1]名。([ ]内は社会人大学院生))が臨床工学技士として医療現場、医療機器製造販売業者などで活躍しています。臨床工学技士は国家資格が誕生して37年、他医療職と比較して歴史の浅い資格ですが、現在の最先端医療を支えるチームの一員として、必要不可欠な存在となっています。例えば、新型コロナウイルスによる重症肺炎の治療として、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)を操作できるのは臨床工学技士であり、多くの患者の命をその技術を使って救っています。その他、全国約46万人の透析患者への治療や、手術室、集中治療室、救命救急室などの医療現場で日夜、医療機器を通じて患者の命を預かる業務に従事しています。
今後、院内の治療のみならず、在宅医療や災害医療、PMDA等行政職、海外での医療技術支援など、臨床工学技士の役割は無限大といえます。本学科は、これまでも実践的な臨床工学技士の育成に力を入れてきましたが、付属病院との連携を深めつつ、優れた資質を持つ臨床工学技士としてはばたける人材を育成すべく支援していきます。
東京初の臨床工学技士養成大学としての豊富なノウハウを、臨床経験豊富な教員たちが指導。
新型コロナウイルス感染症下では付属病院へ業務支援を行いました。充実した教育環境と国家試験合格率の高さが杏林大学の強みです。
医師、臨床工学技士、工学専門家が教員として指導
医学部付属病院と連携した実習に最適な環境
臨床工学技士国家試験の合格率は100%!
※2022年度実績
医工学の知識は、臨床工学技士だけでなく、医療機器メーカーや公的機関の技術職・専門職への就職にも有利です。
また大学院への進学や指導者への道も開けています。
2021年保健学部臨床工学科卒業 新井 純奈
大学への進学を考える際、コメディカルの仕事を調べる中で人工心肺のことを知り、それを使った患者さんの治療に携わりたいと思い、臨床工学技士を目指すため杏林大学に進学しました。
2年次からは工学系の実習、3年次からは医療系の実習が始まりますが、知識や技術を教わるだけではなく、自分達で考え、積極的に取り組むことが求められます。先生方の指導も自分達で考えさせるようなアドバイスが多いです。
ただ指示を待つだけでなく、患者さんにとってより良い治療がどういったものかを考え提案できる臨床工学技士になりたいです。
千葉西総合病院 臨床工学技士 白井千尋
2011年保健学部臨床工学科卒業
「臨床経験豊富な先生の指導のもと研究活動や論文執筆を行いながら潤沢な機材で実習ができたおかげで、就職後現場で戸惑うことがなかった」と話す白井さん。現在は人工心肺装置など体外循環のスペシャリストとして病院で働きながら、臨床から得た知見をもとに、大学院でエクモ(体外式膜型人工肺)の可能性について研究している。「12年間、医療現場でつちかったことを活かし、学びを深めたい」と進学を決め、大学時代の恩師である福長一義教授の指導のもと博士号取得をめざしている。
「就職を決める際、周りから『忙しい病院だ』と心配されましたが、臨床経験を積みたい一心で選びました。ここまで続けられたのは、福長先生の影響が大きい」と白井さん。研究熱心でありながらオフをしっかり楽しむ姿に、仕事、大学院そしてプライベートのバランスの取り方を学んだ。
「研究室選びは重要です。臨床工学技士でいえば、あらゆる機器を扱えるゼネラリストから体外循環、呼吸器、透析のスペシャリストなど多様です。各先生の専門を調べておき、自分の将来を考えて研究室を選ぶとより学びが深まると思います。杏林は、資格取得の先を見すえた学びができる場所だと思います」
主な就職先
医療施設(東北大学病院/東京医科歯科大学医学部附属病院/順天堂大学医学部附属順天堂医院/昭和大学病院/昭和大学江東豊洲病院/国家公務員共済組合連合会虎の門病院/戸田中央医科グループ(TMG))/ 民間企業(日機装株式会社/スミスメディカル・ジャパン株式会社)/ 大学院への進学 など
呼吸関連機器学実習 3年生対象
主に人工呼吸器を取り扱う上で必要な知識を学びます。肺の構造や呼吸の生理をはじめ、人工呼吸器の適応疾患、目的や原理、構造、各種モードの意味、警報への対処方法など、臨床工学技士として臨床の現場で即応できる知識と技術の修得を目標としています。
血液浄化装置学実習 3年生対象
腎臓の機能が低下した患者さんに対して施す、血液透析療法に必要な知識の定着をめざします。臨床現場と同じ「人工腎臓」、「血液回路」、「透析用監視装置」を使用して、組み立て作業や装置の操作などを行い、座学で学習した知識と技術をより一層深めていきます。
臨床工学科には6つの研究グループがあり、様々な研究を実施しています。下記ボタンから各研究グループの概要を確認できます。