病院・診療科について眠れない夜が続くときに ~睡眠障害の分類とその対応~
「眠れない」「何度も目が覚める」そんな悩みを感じたことはありませんか。
睡眠は心や体の健康を保つために大切なものです。
よく「毎日何時間眠ればよいですか」と聞かれますが、適切な睡眠時間は人によって異なります。10時間寝ると快適な人もいれば、5時間でも十分という人もいます。日中快適に活動できていれば、それがその人にとっての「十分な睡眠」ですので、睡眠時間の長さにこだわりすぎないことが大切です。

一方で、
・寝つけない(入眠困難)
・途中で目が覚める(中途覚醒)
・早朝に起きてしまう(早朝覚醒)
・眠ったはずなのに満足感がない(熟眠困難)
といった症状が続き、生活や健康に影響を及ぼすケースも少なくありません。
睡眠障害の種類
睡眠障害にはさまざまな原因があり、不眠症だけでなく別の病気が関係していることもあります。例えば次のようなものがあります。
- うつ病(不眠に加え、抑うつ気分、興味の減退が続く)
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(睡眠中の呼吸停止、強いいびきや、日中に強い眠気がある)
- レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害(睡眠中に四肢の異常感覚や異常運動がある)
- ナルコレプシー、過眠症(十分な睡眠をとっているのに、日中に強い眠気がある)
- レム睡眠行動障害(睡眠中に大声を上げる、手足を動かすなどの異常行動がある)
- 概日リズム睡眠障害(極端な夜型生活や昼夜逆転がある)
睡眠障害の主な治療法
睡眠障害の治療には、主に「睡眠衛生管理」「認知行動療法」「薬物療法」があります。
① 睡眠衛生管理
まずは、眠りやすい状態をつくるため、生活習慣を整えることから始めます。
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- 定期的に適度な有酸素運動をする
- 寝室の温度や明るさを調整する
- 規則正しい食生活を心がける
- 就寝前のカフェイン・飲酒・喫煙を控える
- トイレの回数が増えるため就寝前に水分を摂りすぎない
- 寝る前のスマホや考え事を避ける
これらを実践するだけでも、軽度の睡眠障害は改善することがあります。
また、朝の光を浴びることも大切です。ヒトの「体内時計」は24時間より少し長いため、そのままだと少しずつ後ろへずれてしまいますが、朝に2500ルクス以上の光を浴びることで体内時計がリセットされ、ずれが整えられます。
②認知行動療法
薬に頼らず睡眠の質を改善する方法で、効果が期待できるだけでなく、再発予防にも役立ちます。
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- 刺激制御法:
眠れない時は一度ベッドを出て、眠気が来てから布団に入る - 睡眠制限法(下図参照):
あえてベッドにいる時間を短くし、睡眠の効率を高めてから睡眠時間を増やしていく - リラクセーション法:
漸進的筋弛緩法(筋肉に力を入れたり緩めたりを繰り返す)
自律訓練法(「手足が重たい」などの自己暗示で緊張を解きほぐす)
マインドフルネス(今、この瞬間の体験に意識を向ける) など
- 刺激制御法:
③ 薬物療法
不眠症状に対して薬も有効な選択肢の一つです。
- オレキシン受容体拮抗薬(覚醒システムを抑えて自然な眠りへ導く)
- メラトニン受容体作動薬(体内時計を整える)
- GABAA受容体作動薬(鎮静を促す)
どの薬が適しているかは一人ひとり異なるため、医療機関でのご相談が重要です。
まとめ
不眠は誰もが経験する症状です。まずは睡眠の「時間」にこだわりすぎないことが大切で、日中元気に生活できていれば心配ありません。
しかし、眠れないことで生活に支障が出たり、他の気になる症状が重なったりするときは、注意が必要です。一人で抱え込まず、医療機関へお気軽にご相談ください。
杏林大学医学部精神神経科学
准教授 櫻井準
(医学部付属病院 精神神経科)
(※動画で市民講座 学びの杜 2025年度「睡眠障害とメンタルヘルス~睡眠と向き合い、健康的な日々を過ごすために~」より)

