眼科(アイセンター)先進的な医療への取組み

  1. 角膜移植:
     杏林アイセンターでは2013年から米国アイバンクから輸入角膜を利用できる制度を開始し、角膜移植症例数が増加している。以前は全層角膜移植、角膜穿孔に対する表層角膜移植が中心であったが、角膜上皮、実質、内皮の病変部位に合わせたパーツ移植を積極的に行っている。特に水疱性角膜症の手術症例が増えており、ほとんどの症例には角膜内皮移植術が施行されている。また、難治性角結膜上皮疾患に対する羊膜移植も行っており、多種多様な角膜疾患の病態に応じて、様々な手技を用いる体制を整えている。
  2. 特殊な白内障手術:
     チン小帯脆弱例や一部断裂例にはカプシュラーテンションリングを挿入することで術中のチン小帯断裂を防止し、眼内レンズの嚢内固定が可能である。また、乱視矯正トーリック眼内レンズや、選定療養の多焦点眼内レンズといった付加価値眼内レンズでの白内障手術も施行している。振戦、閉所恐怖症、認知症といった局所麻酔手術が難しい症例では、必要に応じて全身麻酔下での手術も対応している。
  3. 小切開硝子体手術:
     小切開(23、25、27ゲージ)硝子体手術が普及し、ほとんどの症例で25か27ゲージ手術を行っている。術中OCTや3D手術システムも可能となり、低侵襲の硝子体手術に取り組んでいる。3D映像により映像の共有が可能になり教育面、コメディカルへの手術の理解が深まっている。また、映像をデジタル化する過程でリアルタイムにゲインや色調などを加工補正することが可能となり、網膜への光毒性の軽減や、視認性の向上も得られている。
  4. 緑内障治療:
     緑内障の診断にはOCT、OCTアンギオグラフィー、前眼部OCTなどを用いて構造異常を評価し、機能評価は様々な視野計やマイクロペリメトリーを用いて行っている。治療は薬物治療だけでなく、SLTやマイクロパルス毛様体光凝固などのレーザー治療やiStent inject W, プリザーフロマイクロシャント、アーメド緑内障バルブなどの手術治療を施行している。
  5. 抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬:
     現在当院では、ルセンティス®、ラニビズマブ-BS、アイリーア®、アイリーア® 8 mg、ベオビュ®、バビースモ®を採用している。新生血管型加齢黄斑変性症や近視性脈絡膜新生血管、網膜静膜閉塞症に伴う黄斑浮腫、糖尿病黄斑浮腫に対し、抗VEGF薬の硝子体内投与を行っている。最近では、新生血管緑内障、未熟児網膜症に対する適応も拡大している。
  6. 加齢黄斑変性症に対する治療:
     抗VEGF療法を治療の第一選択としているが、パキコロイド疾患においては光線力学療法も行っている。大量の黄斑下出血に対しては硝子体内ガス注入や黄斑下手術による血腫移動を行っている。また、最新のOCT angiographyを使用することで、蛍光眼底造影検査を用いずに非侵襲的に確定診断を行っている。また、従来の蛍光眼底造影検査では捉えきれなかった極初期の病変の診断も行っている。
  7. 難治性ぶどう膜炎に対する免疫抑制剤、生物学的製剤の導入:
     従来からのステロイドパルス療法に加えて、難治症例に対して免疫抑制薬、抗TNFαモノクロール抗体製剤など生物学的製剤を含む新しい治療法の導入を積極的に行っている。
  8. 最先端画像診断機器と画像ネットワークシステムの導入:
     光干渉断層計(OCT)の導入により黄斑円孔、黄斑上膜、黄斑浮腫など強度近視の牽引性黄斑症に対する手術適応の判定や治療効果の評価法が向上した。また、視神経乳頭陥凹や神経節細胞層の状態も計測でき緑内障の診断にも有用である。最新のOCTであるSSOCT、光干渉断層血管撮影(OCTA)で造影剤を使用しない非侵襲的な血管撮影も可能となっている。さらに網脈絡膜の血流状態を推測するレーザースペックルフローグラフィも導入し、病態把握につとめている。前眼部光干渉断層計は前眼部疾患に対する先端治療に応用されている。前房深度、角膜厚、水晶体厚、隅角の情報が得られるため、白内障手術前、緑内障、角膜疾患に主に使用されている。得られた画像は、ネットワークシステムを介して各診察室のモニター上に表示でき、患者への説明に非常に有用である。